本人に変えることができない初期条件である出身家庭の社会経済的地位や出身地域といった「生まれ」によって学力や学歴といった結果に差があることが「教育格差」です。心情的には人生を自由に切り開くことができるという物語を信じたいところですが、「生まれ」と教育結果の関連は戦後日本に育ったすべての世代・性別で確認されてきました。
データで「教育格差」という実態と向き合うと、自分にできることなんて何もないんじゃないか、と感じるかもしれません。少なくとも私は『教育格差(ちくま新書)』を執筆する過程で、何度も虚無感に襲われました。編集者や研究者仲間の助言と励ましがなければ書き上げることはとてもできなかったわけですが、この点、GEILの政策立案コンテストは、4人1組のチーム制に加えてスタッフの支援という、難題に取り組むための好条件が揃っています。課題の難しさに直面して投げ出したくなったとしても、お互いに励まし合いながら現実と理想の狭間で悩んだ上で実現可能性のある政策を言語化する、という素晴らしい機会になるはずです。
教育格差に対する政策を考えることは、そのまま拙著7章のタイトルである「わたしたちはどのような社会を生きたいのか」という問いと向き合うことを意味します。もっともらしい「何もしない・できない」理由を並べ肩を竦めて冷静さを装い現状を是認するのではなく、仲間と共に汗水垂らして徹底的に考え抜いた政策提案を期待しています。