【2分で2daysGEIL①】-教育格差の発見とその実態

 “2分で2daysGEIL” では、イベントに集まった学生たちが教育格差について考え、抱いた問題意識や作り上げた政策案をご紹介するものです。1回あたり2分ほどで簡潔にお伝えします。社会問題を国の視点で捉え、政策での解決を図る思考体験は、イベントに参加しなければ実感することはできません。しかしながら、この2分間でそれを少しでも体感していただければ幸いです。 

 

 第1回は、教育格差を表す代表的なデータを参照しながら、問題の発見と実態の把握をしていきます。

 

教育格差の発見

 身分制が崩壊した多くの近代社会において、教育は階層上昇の手段とされてきた。教育によって能力を身に付けること、あるいは学歴という資格を手に入れることで出身階層より高い階層への移動を達成しようと、勉強に熱心に取り組んだり、子どもの教育費をなんとか工面したりしてきた人々は決して少なくない。高校や高等教育への進学率が上昇を続けた1970年代以降、「子どもが自分より高い学歴を得られた」「親よりよい職に就けた」といった実感が伴い、教育は、個人に平等に与えられた成功のチャンスと認識される傾向にあった。そして、成功できなかったとき、その原因は個人の能力や努力の欠落に求められた。だが実際のところ、教育は平等なチャンスではなかった。個人の教育達成は親の学歴や世帯収入、進学期待といった、子ども自身ではどうにもできない条件によって決定づけられていたのである。そして最終学歴がその後の職業や収入と強く結びついている以上、個人で変えることのできないこの初期条件は、一生を規定するとも言えよう。

 

 

階層固定の実態

 「階層が固定化している」といってもピンと来ないかもしれない。確かに、身分制度はないし、われわれはこの社会の一員として等しく機会や権利を認められているはずだ。ここでいう階層とは、階級的な意味合いではない。世帯収入や親の学歴、蔵書数などの文化的持ち物、職業的地位などで表される社会経済的地位(SES:socio-economic status)のことである。

つまり「階層が固定化している」というのは、SESが高い家庭で育った子どもは社会的・経済的に卓越しやすく、SESが低い家庭で育った子どもは社会的・経済的に成功しにくいという状態が複数世代に渡って再生産されていることを意味する。具体的に見てみよう。

 

①家庭の収入と子どもの学力

 

 

 世帯収入と子どもの学力には相関がみられる。厚労省の調査によると、児童のいる世帯の総所得は約740万円、母子世帯の平均年収は約348万円ほどとされているが、このデータからは10ポイントの差がついていることが分かる。

 

親の学歴と子どもの学力

 

 父親や母親の学歴が高いほど中学3年生の学力調査での子どもの正答率が高くなることが分かっている。親の学歴が大学以上の場合と高等学校以下の場合を比較すると、国語、数学それぞれ10~15ポイントの差が見られる。

 

③家庭の蔵書数と学力の関係

 

 家庭の蔵書数(電子書籍は含むが、漫画や雑誌、教科書、参考書、子供向けの本は除く)にも子どもの学力と相関が見られる。また、同調査で子供向けの本の蔵書数に関しても同様に相関が見られる事が分かっている。

 

④社会経済的背景(SES)と子どもの学力

 

 

 そして、ここまでデータで示してきた世帯収入や親の学歴、蔵書数などの文化的持ち物といった指標で表される社会経済的地位 (SES) には子どもの学力との相関が見られる。このことから、生まれた環境によって子どもの学力に差が出てしまう教育格差は確かに存在していることが分かる。

 

 ここまで、教育格差の代表的なデータを示した。松岡(2019)は、昨年新書大賞に選ばれた著書『教育格差』のなかで、「戦後日本社会には、程度の差こそあれ、いつだって『生まれ』による最終学歴の格差―教育格差があった」と指摘している(松岡, 2019, p. 15)。教育が階層流動化の機能を持っていないこと、逆に教育を通して階層が固定化されていることはこれまでも幾度となく指摘されていた。しかし、われわれはこれを無視してきたのである。教育格差は、近年注目されるようになった「子どもの貧困」や「格差社会」といった関心から、われわれの社会が抱える問題としてようやく認識されたと言えよう。そして現在、新型コロナウイルスの影響による休校によって、地域や学校ごとのオンライン授業の有無といった学習機会の差や、学習へ向かう意欲の違いによる個人の学習時間の差など、教育格差の実態が浮き彫りとなった。だからこそ、今新たな意味合いを帯びてきたこの問題と向き合い、考える機会としたい。

【参考文献】

松岡亮二 (2019)『教育格差―階層・地域・学歴』筑摩書房

浜野隆ほか (2018)「平成29年度『学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究』 保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」2020年7月5日アクセス 

<https://www.nier.go.jp/17chousa/pdf/17hogosha_factorial_experiment.pdf >

国立大学法人お茶の水女子大学 (2014)「平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」2020年7月7日アクセス 

<https://www.nier.go.jp/13chousakekkahoukoku/kannren_chousa/pdf/hogosha_summary.pdf >

厚生労働省「平成30年国民生活基礎調査の概況」2020年7月5日アクセス<https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/03.pdf >

厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」2020年7月5日アクセス <https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000188167.pdf >

 
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