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―小山訓久氏プロフィール―

 1977年東京都生まれ。オレゴン大学心理学部卒。専門は社会心理学。2008年に母子家庭と子どもたちの支援を行うNPO法人リトルワンズを設立。同、代表理事。自治体の計画委員、「おやこカフェほっくる」の運営、子育て団体の支援のほか、全国で講演やレクチャーを行っている。[主な著書] 『親子カフェのつくりかた: 成功する「居場所」づくり8つのコツ』(学芸出版社)NPO法人リトルワンズは、企業、行政と連携しながら、母子家庭と子供たちに情報、就労、住宅、生活など包括的な支援を提供。習い事に対して奨励金を創設、いち早く住宅、情報支援を行い東京を中心に全国からの相談に対応している。2018年WorldHabitatAwardを受賞し、国連ハビタット本部で受賞式とスピーチを行った。2019年社会貢献支援財団受賞、賀川豊彦賞受賞。 

 小山氏は、ご自身が設立したNPO法人リトルワンズで、シングルマザーを対象に就労・情報・住宅の支援を行うと同時に、その子どもたちには様々な体験の機会を提供することで子どもの貧困の解決を目指している。今回は、コンテストで政策を立案する参加学生に向けて、政策づくりのヒントをお話しいただいた。

 1977年東京都生まれ。オレゴン大学心理学部卒。専門は社会心理学。2008年に母子家庭と子どもたちの支援を行うNPO法人リトルワンズを設立。同、代表理事。自治体の計画委員、「おやこカフェほっくる」の運営、子育て団体の支援のほか、全国で講演やレクチャーを行っている。[主な著書] 『親子カフェのつくりかた: 成功する「居場所」づくり8つのコツ』(学芸出版社)NPO法人リトルワンズは、企業、行政と連携しながら、母子家庭と子供たちに情報、就労、住宅、生活など包括的な支援を提供。習い事に対して奨励金を創設、いち早く住宅、情報支援を行い東京を中心に全国からの相談に対応している。2018年WorldHabitatAwardを受賞し、国連ハビタット本部で受賞式とスピーチを行った。2019年社会貢献支援財団受賞、賀川豊彦賞受賞。 

 小山氏は、ご自身が設立したNPO法人リトルワンズで、シングルマザーを対象に就労・情報・住宅の支援を行うと同時に、その子どもたちには様々な体験の機会を提供することで子どもの貧困の解決を目指している。今回は、コンテストで政策を立案する参加学生に向けて、政策づくりのヒントをお話しいただいた。

教育で解決するとは単なる言葉でしかない

 子どもの貧困に限らず、貧困を教育だけで解決することは難しい。長い歴史を持つ社会問題は複合的な原因を抱えており、特効薬のような一つのアイデアで問題を解決することはできない。また、複合的な問題は様々な分野に関わっていることから、一つの団体・企業・政府の力だけで解決にあたるには限界があり、他のセクターとの協働が必要になる。

 また、「教育」という言葉が単なる言葉でしかないことに留意したい。「教育」という言葉の意味内容は、皆が自明に共有しているように思われるかもしれないが、実は案外多義的なものである人によって解釈が異なったり、一見同じ考えのように見えて実は異なる前提に立っていたりすることがあるはずだ
 実際、「教育」の実施について細かく分解して考えると様々な構成要素が出てくる。例えば、教育者に限らず、その教育の実施に必要なツール、その環境や共通認識など多種多様な要素が存在する。「教育」を漠然とした概念で捉えていては、その構成要素を深く考えない限り具体的な施策は生まれてこない。教育格差を考える際はその問題に起因する要素を細かく分析し適切な政策を打つ必要がある。

学校教育のみを考えることの問題点

 日本では子どもの貧困が少し誤った解釈をされている部分がある。子どもの貧困対策は基本的に文部科学省や厚生労働省、内閣府中心に取り組まれ、「教育」による解決が推進されているが、ここでいう日本での「教育」は学校教育に絞られ、学校での成績をあげるといったことに重きが置かれがちである。一方、海外では、子どもの貧困対策における「教育」はより広い意味で捉えられ、学校教育だけでなく、大人への教育も含まれる。さらに教育の対象は子どもの学びに一番近い養育者に限らず、その地域の人への教育(情報の普及等)も含まれている。
 リトルワンズが行った養育環境についての調査では、調査対象の8割の家庭が教育環境を整えられていないことが発覚した。親が大学や高校に通っていない場合、勉強の仕方がわからず、子どもに勉強を教えられなかったり、教育について誤解し、子どもへの教育に熱心でない親がいたりするなど、子どもの教育環境に格差があることがわかった。学校教育だけに注力した対策では学校外の問題が盲点になってしまうことを注意してもらいたい。

エビデンスベースによる検証の重要性

 最近、日本でもデータをもとに教育・福祉政策について議論しようという話が出てきた。ただエビデンスという言葉によりすぎてしまい、安易な議論に留まってしまうことがある。エビデンスとはただ数字で見せるだけでなく、評価や実験、費用対効果も含まれている。行政で使われるお金は国民の税金であるため、費用対効果の基準は特に考えなければいけないことである。しかし現在、政府の補助を受けて運営している団体にも、その評価基準が費用対効果のものなのか、問題解決の実効性なのかはっきり定められてない状態のまま、別のエビデンスを用いて評価を受けているものがあり、お金が意図したものとは異なる使われ方をすることがある。効果的な検証の整備が十分でないままエビデンスを誤用した議論が行われており、効果的、効率的な資金の使われているか不確かな政策は少なくない。

 「教育は重要である。だから教育を拡充するべきだ」という議論はよく聞くことがあるかもしれないが、実際の個人、学校、地域が抱える問題の本質をしっかり見定めなければ、講じられる対策は表面的な解決に留まってしまうことに注意しなければならない。「教育」は言葉以上に複合的で複雑であり、また、必ずしも学校内における教育の改善が教育格差解決の最善策とは限らない。家庭内に問題を抱えた親が直接的な要因になり得ることも注意する必要がある。
 加えて、データは政策を議論するうえで信憑性の高い証拠になりうるが、その解釈については慎重に見極めなければいけない。ものごとを評価するとき、曖昧な評価基準で評価してしまうと対応すべき問題の解決が正しく行われているかは判断できない。小山氏は日本ではこのようなエビデンス評価が不十分なままの議論が多いと話されていた。何事においても表面的な見方では問題の本質に目を向けられていないことを踏まえて議論していくことが重要だ。

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