MENU
―本山勝寬氏プロフィール―

 東京大学工学部システム創成学科卒業。ハーバード教育大学院国際教育政策専攻修士課程修了。日本財団子どもサポートチーム・チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』(ポプラ新書)、『最強の独学術』(大和書房)、『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)など著書多数。5児の父で、4 回育児休業を取得。

 東京大学工学部システム創成学科卒業。ハーバード教育大学院国際教育政策専攻修士課程修了。日本財団サポートチーム・チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』(ポプラ新書)、『最強の独学術』(大和書房)、『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)など著書多数。5児の父で、4 回育児休業を取得。

 本山氏がチームリーダーを務める日本財団子どもサポートチームは、様々な生きづらさを抱えた子どもに対する支援に取り組んでおり、新たな社会変革の手法を見出し、様々な機関を巻き込むことを掲げて活動を行っている。本山氏ご自身も経済状況の厳しい中から教育機会によって道が切り開かれたという経験をお持ちで、教育や学びの力を通して子どもたちが夢をかなえられるような社会を作っていくことを目標にされている。今回は本山氏より、経済的、社会的に厳しい環境にある子どもへの支援について伺った。

|日本での子どもの貧困の現状

 日本の子どもの貧困率は13.5%と世界的に見ても深刻な値であるが、その内実は見た目からは分かりにくい相対的貧困である。これによって、学力格差にとどまらず、経験の格差、文化的な格差、機会の格差が発生している。これらの貧困問題を親や家庭の責任のみで片付けようとする自己責任論もまた、子どもの貧困の問題を議論の俎上に上げることを妨げ、問題をより深刻にしている要因である。したがって、子どもの貧困という問題は社会全体の問題であり、将来的、中長期的にはこの問題の解決が社会全体の利益になるという共通認識をもつことが必要だ。

|足りていない子どもの居場所支援

 子どもの貧困対策として、現在行政の取り組みはたしかに存在するが、現金給付、経済的支援だけでは不十分だ。さらなる取り組みとして、無料で子どもに食事を提供する子ども食堂や無料の学習支援などが広がりつつあるが、それでもなお、子どもの貧困の解決には程遠い。勉強をするための考え方や道徳観念、人間関係、社会性、生活習慣といった、自立するうえで基本的なものが身についていない子どもがたくさんおり、学習や食事ができれば解決する問題ではないからだ。
 そこで、子どもの生活習慣を整え、学習意欲を持たせたり社会性を身に付けさせたりするという、日本の子どもの貧困対策で疎かになっていた点に注目した。そして、特に小学校低学年を対象に、食事や宿題や遊びを通じて、家や学校に次ぐ第三の居場所を提供している。
 こういった活動の対象になる子どもは様々な事情を抱えている。例えば親の生活が昼夜逆転している、生活保護を受けているものの金銭的援助ではライフラインが維持できない、入浴の習慣がない、自尊感情が低く自殺願望があるなどといった例が挙げられる。居場所支援においては、彼らに基本的な生活習慣から身につけてもらい、体験の格差や機会の格差を補う活動を行っている。他にも、自己肯定感が低い、物事をやり抜くことができないといった子どもには、自分でやってみたい企画を提案してもらい、ルール守りながら物事を達成することの重要性を伝えたり、企画力を身に付けられるよう働きかけたりしている。また、親子関係が難しい家庭には、子どもだけではなく親への支援も行っている。親や子どもに適切な支援ができるよう、研修などを通してスタッフが専門性を持って、対応できる体制も整えている。 
 こういった取り組みの狙いは、子どもたち自身が成長し、家での様子も変わり、さらには親との関係も変化していくことだ。

|取り組みの展望

 日本の政策の在り方に、エビデンスに基づいた政策が作られていないという大きな問題がある。そこで日本財団では、これらの居場所支援事業の客観的な効果について、必ず自治体と提携して学力テストや生活習慣、非認知能力、自己肯定感などをチェックし検証を行っている。この取り組みのハードルは高く、日本の中でもこういった検証を行う自治体は少ない。日本財団が目標設置数としている100拠点だけでは、困難に直面している子どもすべてお救って行くには不十分だ。しかし、居場所支援が子どもの自立する力を育み、負の連鎖を断ち切ることに確実に寄与しているということを客観的実証し、それを発表することで、このような施策に国全体で取り組むよう提言を行おうとしている。

 子どもの貧困は日本では目に見えづらい問題であり、社会全体でこれに対して取り組もうとする意識と、実状を正しく把握したうえでの子どもに対する支援が必須だ。今回のお話から見えてきたのは、単なる「貧困」という言葉で片づけられない様々な問題に直面する子どもの存在だった。「子どもに寄り添う」と口にするのは容易いが、困難を抱える一人一人の子どもの実情を考えることを怠ってはならない。一人一人の抱える問題に正面から向き合う覚悟を持ち政策立案に臨みたい。

 

PAGE TOP