大阪大学大学院特任准教授_野口緑_勉強会報告

<勉強会概要>

名称:『尼崎市にはじまる健康管理における行動変容』
講師:野口緑
日時:’23 2/19(日)@zoom

<勉強会の様子>

野口緑准教授は、尼崎市の職員の健康診断データを複数年単位で追い、脳卒中・心筋梗塞を発症する職員を減少させた経験をお持ちです。現場で実際に改革に成功されてきた方です。尼崎市全体の健康管理をレセプトデータの解析結果をもとに行い、医療費の削減・適正化を成し遂げたと伺いました。その実績と、それをもとに現職で行っている健康管理における行動変容について、今回の勉強会では伺いました。質問時には、トークテーマに関することだけではなく、弊団体が主催するコンテストSpring GEIL 2023の内容に関しても参考になるお話を伺うことができました。

<GEILスタッフの感想>

実際の行政という政策を実行する現場で、わかりやすい実績を上げた方のお話を聞けて嬉しかったです。
以前内部で練習で立案を行った際、インタビューされてる記事を見かけていたので、そんな方にお話し頂けたのは本当に貴重でした。
今の健康へのアプローチが何故ダメか、どうすれば変わるかを順に説明して下さり分かりやすかったです。都道府県や中核市などの保健所区切りでサービスが変わってしまうのはおかしいというのはまさにその通りだと思いました。また、自分の出身の自治体では尼崎のような事は出来ないので、どうすれば地元の保険医療費が減るのだろうか、と考えるきっかけになりました。(早稲田大学基幹理工学部1年)

人々の健康を守りたいという信念を基にしてお仕事をされている姿勢に感動した。
政策に限らず、人の行動に変化を加えるのは難しいことだと常々思っていたが、そこで発想を転換させて、その人が望んでいることを間接的に伝えることが重要だという指摘は新鮮だった。視点を変えたり、アプローチの仕方を見直すことは、研究のなかにも取り入れられているのだろうと思った。問題の表面だけを見ているとつかめないことがあるからだ。実際に野口さんがされたように、食塩摂取がどのタイミングで生じているのかを突き止めようした際に、地域で消費されやすいものに目をつけてみたことが一例だと思った。すると大きな問いを個人レベルの行動にまで突き止めることができる。このような思考方法をGEILの活動の中で生かしていけるのではないかと考えた。例えば、人と一緒に仕事に取り組んだり、勉強内容を共有したりする際に、頼む人の好みを理解しておけばうまくいきやすくなるのではと考えた。(一橋大学法学部1年)

私は健康の増進に関する施策ついて、問題が改善するか否かは各人の優先順位の問題で、公共的な働きがけによって変わるものではないという偏った見方をしていました。近年、ヘルスケア産業の市場規模が拡大していることや、身の回りでも健康食品やスポーツジムの宣伝が増えていると感じていたことから、民間企業による意識改革の方が効果的だと感じていたからです。しかし、今回のお話を聞き、またWHOのイメージ図などを通して、国家や地方単位で取り組むことの重要性を強く感じました。膨大な量の、適正な手法によって集められたデータを基に、根拠に基づく働きかけができることの強みを感じたからです。また、各人の関心や経済的事情に関わらず、全ての人をサポートすることは、ビジネスによるものでは不可能であると気づきました。また、野口先生のお話を聞いて、集められたデータから、人々の背景を知ろうとする姿勢を学びました。データは数が多くなるほど、それらが単なる数として捉えられてしまうような印象を抱いていましたが、数が増えても、データを構成している要素1つ1つの濃さは変わらないと思います。医療や健康に関する政策では、とりわけこのことを意識する必要があると感じました。そして、事例の紹介などを聞く中で、何度も野口先生の魅力を感じました。特に、保健師として特定の地区をご担当された際に、自分が担当する住民であることが嬉しかったというお話が印象的でした。尼崎市のような事例が、特定の地区に限らず、全国単位で普及していくにはどうすれば良いか、予算面の課題などはないのか等、気になりました。今回得た気づきと新たに生じた疑問を基に、今後も勉強を続けていこうと思いました。(上智大学法学部1年)

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