イベント情報

12日間にわたる政策立案コンテストの、決勝プレゼンテーションが9/4に行われます。現在Youtubeでの無料観覧を募集中ですので、ぜひ学生たちの議論の結晶をご覧ください!

はじめに〜それってどんな議論〜

 夫婦同性、別姓の問題は、最近のニュースで取り上げられることも多く、世論の関心が集まってきているテーマと言えます。僕たち若者の多くも、結婚した際に直面する問題であるため、自分ごととして考えていきたいテーマでもあります。そこで今回は、選択的夫婦別姓制度の概要、メリットと問題点、それらをもとにした学生による議論を紹介していきたいと思います。

1.選択的夫婦別姓制度とは?

 1-1.制度の概要と現状の課題

 選択的夫婦別姓制度(公的には「選択的夫婦別氏制度」)とは、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める(同姓か別姓か選択可能な)制度です。現在の民法では、日本では夫婦別姓は認められておらず、結婚した夫婦は同性にすることが義務付けられています。これは日本の戸籍制度とも大きく関係しているのですが、では今なぜこの制度が問題になってきているのでしょうか?

 民法の条文によれば、「夫又は妻の氏を称する」とあり、男性が女性の姓を名乗ることも可能です。しかし、厚労省によれば、その割合は4%にとどまり、実際は女性が苗字を変更している現状であることがわかります。家父長制などの価値観なども相まって、こうした現状がジェンダーの観点から女性差別である、という世論の動きが、最近話題の選択的夫婦別姓問題の裏にあることがわかります。

 国際比較の観点から考えると、夫婦同性が義務付けられているのは、実は世界で日本だけです。他のどの国を参照しても、こうした制度は存在せず、多くの諸外国が夫婦別姓です。

 現状の制度の具体的な問題について「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が公表する資料の指摘には、「銀行や証券口座、クレジットカード、免許証、パスポートなどあらゆるものにおいて名義変更が必要なこと」「旧姓で築いてきたキャリアが分断されること」「資格職や論文の名の不一致」「女性が変更を迫られることからの男女不平等感」など、多くの問題点が挙げられています。

 一方で、こうした世論を受け「通称使用」を進めていく動きもあり、「住民票」や「マイナンバーカード」などでは通称使用が認められています。ただ、資格や免許、社会保障や年金、年末調整や確定申告、給与振込口座など、多くの場面で通称使用ができない現状です。さらに言えば、海外出張の際など、(夫婦同性に関する規定は日本だけなので)戸籍姓と旧姓で混乱を招き、手続きがうまくいかない例なども存在します。

 

 昨年末に行われた、第五次男女共同参画基本計画案では、「選択的夫婦別姓」の文言が削除され、制度導入がこれで大きく遅れてしまうというニュースが話題になりました。政党別に見ると、自民党と日本維新の会が反対、他の政党は導入に積極的です。さらに言えば、自民党内部でも賛成派が増えてきていると言われています。

 1-2.選択的夫婦別姓制度の問題点

 反対派の中心的な組織の一つであり自民党内の議員で構成る「絆を紡ぐ会」は、旧姓の通称使用によって日常生活における不便は解消できると主張します。

 また、選択的夫婦別姓制度に対する反対の理由として「家族の絆や一体感が失われる」「家族や地域といった共同体よりも、個人主義的傾向になる」「けじめのない結婚が増える」などが挙げられています。具体的には、子どもの姓をどうするべきか選択が難しく、それに起因する子どもの心への悪影響への懸念が強いとされています。

1-3.世論調査の結果

 次に、世論についてみていくと、早稲田大学が中心となって実施した7千人を対象にした調査によれば、7割が選択的夫婦別姓に賛成であることが明らかになりました。これは60未満の男女と幅広い層を対象にした調査ですから、対象を若者に絞ると、賛成は8割から9割近くになる調査も存在します。また、反対層は高齢男性に多いこと、若者は比較的賛成の数が多いことなどが、あらゆる調査からわかってきています。

2.選択的夫婦別姓について議論してみた

ここからは、毎年政策立案コンテストを運営する学生団体GEILのメンバーが、選択的夫婦別姓に関する議論についてどう考えているのか、話し合ってみた様子を公開します。現役大学生がどのような考えを持っているのか、ぜひ覗いてみてください。

※議論における発言は全て個人の意見であり団体を代表するものではありません

<学生団体GEILとは>
1999年から、全国の大学生を対象に政策立案コンテストを開催。コンテストでは、ヒアリングや官公庁への訪問、現役官僚によるコンサルティングを交えながら初対面の少人数グループでとことん議論を行い、政策案を完成させる。社会問題や公共政策について徹底的な思考体験の場と志ある全国の大学生の出会いの場となっている。

議論スタート!!

 

みんなはこのテーマに関してどう思う?

 

 

日本だけが夫婦同姓が義務付けられていることは知らなかった。自分の体験を話すと、苗字の違う祖父母と家が近くて、仲が良くてよく面倒を見てもらっていたんだけど、ある時、自分の苗字と祖父母の苗字が違うことに気がついて、幼稚園の時だったかな、その瞬間に家族じゃないのかなって。自分ですごい当時は隔たりを感じちゃって。多分その時本気で母親に聞いた気がするんだよね。本当は家族じゃないの?って。子供の頃から苗字が家族をまとまり付けるみたいな意識が知らず知らずのうちにあったんだと思って。日本の家父長制が強いって話があったけど、それが子供の時に既に擦り込まれてたんだなって思って。結論的には、全然夫婦別姓になっていけばいいなと思っている立場なんだけど。ただ、子供が生まれた時とかにどうすればいいのかなという疑問はあるかな。

 

 

夫婦別姓に関してはもともと危機感があって、もともと理系で研究者を目指していたし、論文とかの名前が変わって、検索名が変わるって深刻やし。あと、クレジットとか銀行名義とか、変えなきゃいけないのは大変だし、お金がかかると思う。それは保証されてないわけでしょ。それが自己負担なのが意味わからんなって。あとは、家族の一体感がなくなるという話で、私もそうかなとは思っていたんだけど、結局これは刷り込みでしかないと思っていて。大学でジェンダー論の授業を取ったんだけど、他国と比較しても、夫婦別姓の国で一体感が弱いなんてことないし、きっと先入観でしかないのかなと。

 

 

今引っ越しで、それだけで手続きたくさんあるし、この前も逃げ恥でガッキーが戸籍とか色々変えなくちゃいけなくて、代わりに平匡さんがやるみたいなシーンがあって、そんなに大変なんだなって。そこが結婚のハードルを上げることにつながりかねないし。あとは反対派の主張があまりに弱すぎるし、論理的じゃないなって。確かに自分も長男で、自分の苗字をつないでいきたいという意思はあるけど、別に絆は夫婦別姓になったから失われるものでもないし、はるこが言ったみたいに刷り込みの以外のなんでもないから、自分たちの考えを変えるべきタイミングにあるのかなと思った。でも一つ思ったのが、現状として96%のケースで女性が改姓するのに、制度を改めたところで根本的な解決になるのかなって。数字は変わらないんじゃないかなって思った。

 

 

この議論に入ると、高齢と若年層でかなりジェンダー観が違うなと思っていて。同じ世代で話していてもジェンダー観の違いを感じるな。この問題を考えることで、籍を入れることの意義ってなんだろうって考える人が増えるんじゃないかなって。実際自分が住んでいたフランスも半分以上が事実婚だし。

 

 

別姓の夫婦の子供はどうするの? 

 

ここからみんなが出してくれたいくつかの論点について話していきたいんだけど。
最初に、別姓になったら子供の苗字はどうするのか問題に関して、何か意見ある人いる?

 

 

親が決めるのか、子供自身が決めるのかよくわからないけど、もし親が決めるんだとしたら、今の日本の現状だと父親の苗字を名乗る風潮は変わらないんじゃないかなと思う。あとは、子供が決めるとなると、かなり子供の主観にもなるし、父方、母方の祖父母で対立とか起きそうだなって想像した。

 

 

決めるタイミングがいつかはわからないけど、もし自分だったら…決めれないな…と思った。何を基準に決めればいいかわからないし、自分が親だとしても、子供の決断を待つってなったら、期待はしちゃう気がする。

 

 

自分の方をとってくれるかなと思うよな。

 

 

あと、潜在的には自分の苗字を残したいっていう、俺はもう固定観念が入ってしまっているから、それは自分の思い込みって問題かな。自分はそこまで入れてないかも。

 

 

私たちより上の世代は少なくともそういう思いはあるわけやん。例えばうちらの世代で選択制が導入されたとして、うちらの子供世代が決める状況になったら、絶対おじいちゃんおばあちゃんが気にするわけやん。どこかの世代でそういう摩擦は起きるから。それを先入観ですって、理屈だけではどうしようもない問題があると思う。苗字はもともと自分では買えられないものなんだし、夫婦で話し合って決めちゃえばいいんじゃないかなって思うんやけど、子供の分は。

 

 

イザコザは少なそうだよね。

 

 

子供に意思があると相続の時にやばいと思う。
あと、小説に出てきたシーンで、ある子が先生に、あなたのことどっちで呼んだらいいかわからないって言われて。自分が親たちに別姓になってほしいと思ったわけじゃないのに。苗字でやばれるのがすごく嫌いで、絶対名前で呼んでほしいみたいな。こういうことは起こり得るなと思ったから、こっちで呼んでって決まっている方が子供的には楽かもしれない。

 

 

なべじゅんも言ってたけど、どのみち男女どちらが改姓してもいい状況の中で、96%女性が改姓しているから、根本的解決にはならないんじゃないかな。確かにきっかけにはなると思うし、同性に囚われない傾向が現れてくるとは思うけど、時間がかかることなのかなって。もちろん選択的夫婦別姓をやらない理由にはならないけど。

 

 

確かに、家父長制を受け継いできた日本に規制されて、それが価値観となって選択させていることだから、そこが根本にあるからそこを変えないとってことなんだろうね。でもミソは選択的ってところにあって。海外も選択的夫婦別姓だけど、実際同姓にする人の割合は6割〜9割で、結局同姓にするのが多数派なんだよ。でもその1割を認めるか認めないか。研究職とか、特殊な事情があるケースとか、別姓でいきたい、旧姓を使っていきたいという女性たちがマイノリティなんだけれども、それが今まで排除されてきてて、その人たちをすくい上げるためには選択的を入れるしかないじゃんってことなんだろうね。やっぱり同姓が義務付けられているというのが問題なんじゃないかと俺は感じているんだけど。確かに変えてもあまり数としては変わらないかもだけど、

 

 

選べるわけだもんね

 

 

今まで通り同姓にしたい家族は同姓でもいいわけだから。別姓にしたい家族とか、事情がある場合は、女性が改姓しなければいけないというプレッシャーに負けることはないというか、そのままでもいいよという社会が作られる…パスポートとか、論文の名前とか。
今はそうした社会の制度が整っていないことが問題なのかな。

 

 

少し調べたんだけど、釧路市議会が、参議院、衆議院議長に「選択的夫婦別姓を求める意見書」を出していて。最後の文に、「国においては、国民の価値観の多様化や世論の動向等に鑑み、個人の尊重と男女対等な関係の構築等の観点から、選択的夫婦別姓の導入のための法整備を行うよう強く要望する。」
確かに、同性が義務付けられていることが、男女平等を訴えていることとすごく矛盾しているなって。

 

 

確かに。90%以上の女性が改姓している現状を考えると、女性が不利益を被ることが義務付けられていることになるやん。結婚するときもそうだけど、離婚するときの不利益もすごいよな。例えば、私が離婚して、中川に戻ったとするやん。それを知らない人が、苗字が変わったからおめでとうございますとか言ってきたら、かなり腹立つよな。そういう問題もあると思う。

 

 

今の一連の話を聞いてて、最初社会の流れだからとか言ったけど、冷静に考えたら、個人一人一人の権利が認められていない感がすごいなって。そこが変われば少しずつ他の分野も変わっていくだろうし。

 

 

確かに、普通制度が変わってから価値観がついてくるもんな。

 

 

その結果がこれなんだもんね。

 

 

あとはあれじゃない?もし選択制度が導入されたら、子供が物心ついた時に、なんでうちは同姓にしたのってきけるやん。別姓も選択できる中で、なぜそうしたのか。それって大きいと思う。

 

 

義務付けられているとそれ以外の選択肢は浮かばないけど、選択だったらそこに疑問を抱く余地があって。きっと今問題なのは、マイノリティが全く見えなくなってること、改姓しなくてはならない女性たちがいることに気がつけない社会にあると思う。利用するのは1割に満たない人たちかもしれないけど、でもやっぱりその制度を利用する人たちがいて、その層をサポートする制度も日本に整っていれば、ジェンダーだけに限った話ではないけど、マイノリティが見える社会になるだろうし、それが価値観の多様化を受け止める社会体制構築の一歩にもなると思う。それは日本のジェンダーギャップ指数を少しでも上げることに繋がると思うし。

 

 

ボロボロやけどな

 


反対派 別姓になると絆が失われる?

 

恥ずかしながらその気持ちはわかってしまうんだけど。でもその背景には、苗字が同じ家族に属すべきで、それが絆を生むみたいな価値観がそもそも根底にはあって。でもその考えがマイノリティや女性を排除しているわけだし、そことの関係を考えていかないといけないなと。

 

 

その守りたい絆って、女性が折れて、家庭に入ることで守られている一体感じゃん。
一体感はもっと違う形があってもいいんじゃないかなって。互いの権利を尊重した上での一体感があってもいいんじゃないかなって思う。

 

 

絆って結局経験的なものじゃない?って思っちゃうねんな。苗字が変わったらどうなるか知らんけど、結局過ごしている時間が長かったり、無条件に自分の味方してくれたりっていう経験で家族の絆とかはできていると思うから。例えば、二世帯で住んでいるところあると思うけど、そういうところって絆あるやろって思うねんな。二世帯で住んでいるところって表札は二個出てるわけやんか。だから暴論って思っちゃうねんな。

 

 

確かに、事実婚とか、別姓の日本以外の国の家族に絆がないのって話になるもんね。

 

 

あまりにも反対派の主張が弱すぎて、他に裏がないか考えたくなっちゃうんだけど。(笑)
結婚のハードルも下がるわけで、少子化対策にもなるだろうし、反対する強いメリットが思いつかないんだけど。

 

 

逆に、反対派がここまで勝っているのがなんでってなる。

 

 

この前テレビで出演していた、家族の絆を守る会の人たちによると、戸籍制度があるらしくて、日本にしかないその素晴らしい制度を守りたいらしい。どこがどう素晴らしいのかはよくわからないけど。あと、みんなも言ってたように主張が全然logical じゃないんだよね。普通に考えたら、選択的なんだからいいじゃんってなると思うんだけど。ある種論理では追えない、信仰に近いものがあるんじゃないのかなって。でなきゃあんまり説明がつかないし。Logicalでは追えないところで反対しているんじゃないかなって思ってしまった。
あとは、法律改正が大変ということなのかな。でも、今は逆に別姓を認めないで通称使用できるようにするために、余計な体制ができてるし。

 

 

夫婦別姓ありにしたからって今までのものを大幅に変えるわけじゃないしね。別姓夫婦への体制を新しく構築していけばいいだけだもんね。

 

 

むしろトータルの作業減りそうじゃない?女性が改姓せずに済むわけやろ。

 


明らかになった年代別でのジェンダー観

 

うちのばぁちゃんは、女性は家で家事をするから、高学歴になる必要はないみたいなことを言うんよ、普通に。うちの姉とかにも。それがなんでかって言えば、それはそれで彼女たちはすごく幸せだったと思うんだよ。高校卒業して、ある程度経済力のある男性と結婚して、子供を産んで育てて、それはそれで掛け替えのない思い出というか、それが自己肯定感を支えたり、誇りを持って生きてきて、ただその事実があるだけだから。その、反対するとかしないとかじゃなくて、自分のバックグラウンドから考えて、自分を肯定するためには、自分が今までやってきたことに誇りが持ててる必要があるし。そこに幸せがあったわけだから、それを尊重しなきゃいけないと思うんだけど、それが現代社会のニーズと合わなくなってきている、多分その齟齬なんだよね。ただ、幸せをなんとおくか、どういきたいかの違いに結局帰着しちゃう気がするんだよね、ばぁちゃんとかと話していると。

 

 

それを認められるようになりたいよね。

 

 

そうそう、そうなんだよ。

 

 

確かに、祖父母とのジェンダー観の違いも感じるけど、私は親世代とも感じていて。
ゼミで聞いた話だと、親世代の結婚率は100%近いらしくて。そこで、結婚できる女性、できない女性、選ばれる女性、選ばれなかった女性みたいな価値観があるって話になって。結婚をしないって選択肢はないのかなって。プライド的に、私は結婚できた女性みたいな感覚があるのかなと思っていて。性的マイノリティの人たちとか、いろんな価値観があるわけで、できるできないじゃなくて、するかしないかとか、もっとフリーに選んでいけるのがベストなのかなって考えたりするかも。

 

 

確かに、それはめっちゃ思う。親とも感じた。女の子は浪人しないほうがいいですとかはめっちゃ言われるわけよ。やっぱそこは感覚違うなと思っていて。友達とかだと、女子だから浪人嫌とか言ってる人はうちの周りにはそんなにいなくて。普通に考えたら進学と男女は関係ないやん。でも親世代はそこは繋がってるかなとかは感じたかな。

 

 

なんだかんだ、自分たちの世代でもそうした感覚は残ってるのかなと思うけど。

 

 

結局あらゆる場面でジェンダー観は再生産されていて、無意識のうちに内在化してしまっているところがあるのかもね。

 

GEIL内の議論はいかがだったでしょうか?

仲間と話す中で、共感したり納得したり、新しい視点に気づかされたり、そんな過程の中で少しずつ、当事者意識が僕の中にも芽生えた気がします。一人では難しい問題も、仲間となら頑張れたりしました。そして、単純にこの社会問題についてどう思うか、自分たちはどんな社会を作っていきたいのか、どんな世の中であってほしいのか、そんなことを考えるのは楽しかった。言葉は難しいけど、やっぱり楽しむことって大事だと思う。でないと続かないしね。

今後も見てくれている人が楽しめるような、そんなコンテンツを考えていきますね。

次回は労働環境編「賃金格差」についてです!乞うご期待

 

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