今回はGEILのOGの大谷涼央さんにインタビューをしました。
大谷さんは一年半のGEILでの活動を通し、かねてからの夢である裁判官としての自身の将来の展望がより具体的なものになったといいます。大谷さんはGEILでどのような活動をし、そこから何を見出したのか、お話を伺いました。

—自己紹介をお願いします
東京大学法学部4年の大谷涼央です。2016年4月から2017年9月までの期間[1]、GEILで活動をしていました。

—GEILに入った経緯を教えてください
高校でミュージカルをやっていたので大学でもやろうと決めていたんです。一方で、せっかくの大学生活なので、今までやったことのない新しいことにも挑戦してみようかなと思って。政策は何も知らなかったんですけど、たまたま貰ったビラがかっこよかったGEILにはいっちゃいました(笑)。というのは3割くらい冗談で、私は将来法曹を目指しているので、学生時代に司法ではなく行政(政策)を見てみる機会があってもいいんじゃないかなと思い、政策を扱うGEILを選びました。

ー裁判官を目指されているんですね
小学生の頃からの夢なんです。色々な職業体験ができる某アミューズメントパークで裁判官の職業体験をして、黒い法衣がかっこいいと思ったのがきっかけです(笑)。

ーGEIL入会のきっかけとなったビラも、裁判官を志すようになったきっかけも「かっこいい」なんですね(笑)
「かっこいい」って、私の中では人生の大事な評価基準だと考えています。何かの選択を迫られたとき、論理的に計画的に取捨選択することも重要ですが、最も望ましい選択肢はあっても、正しい答えは存在しないことが多いと思います。しかも知識や経験が浅いうちは、望ましい選択肢を間違えることも多い。一方で、自分の直感に訴えかけてきたものは、長い目で見ても自分を裏切ることはないです。これもGEILで散々論理的な議論を重ねてきたことで、気づいたことなんですけどね(笑)。

—そのGEILではどのような活動をされていましたか
ケース局[2]の副局長を務めていました。執行代になってからはCC[3]の研究や後輩にノウハウを伝えることに力を注いでいました。GEIL一年目の2016年の夏の政策立案コンテストでCCをして、めちゃくちゃ楽しかったんですが、自分の中では満足できなかったんです。政治や社会問題、そしてファシリテーションの何たるかを十分に理解しないままコンテストを迎えてしまった気がして。参加者さんには、もっといろんなことを知って欲しかったし、いろんな経験を浴びて欲しかった。だから、翌年のコンテストでも絶対にCCをやろうと決意しました。

—2年目のコンテストはどうでしたか
いいCCになれたと思います(笑)。参加者さんとはいい議論ができたと思いますし、結果として政策案はかなり満足のいく出来になりました。官僚の方々に提言したときは、結構褒めていただけました。その政策が実行された時に対象層の人たちには本当に意味のある政策なのか?現行制度とぶつからないか?10年後50年後にはどんな影響があって、どう展開していくべきなのか?あたりをかなり議論しました。

政策立案って、ビジネスプランを考えるよりも、地味な作業だなと思います(笑)。いろんな社会問題が絡み合っていて、こっちをいじればあっちまで影響が及ぶ。比較考量をしつつ、細かい調整をする。社会を一瞬でドラスティックに変えることは、おそらく霞ヶ関の官僚の方々が日々やっている政策立案でも難しいのではないかと思います。でもそこが、政策立案の醍醐味なんだと思います。かなり頭使います。7泊8日、へとへとになりました。

ー1年目の悔しい思いを一年越しに晴らされたのですね。それまでの期間は大変な事もあったのではないですか?
社会問題や政策の勉強は苦ではなくて、むしろ楽しかったです。その分野で著名な教授や、官僚の方々や、政策の対象層となる現場の方々へのヒアリングもできますし、かなりいい勉強になったなと今でも思います。
どちらかというと組織運営が大変でした。ケース局の一員としての自分と、ケース局をマネジメントする立場としての自分という二つの立場にあったので、板挟み状態になる事がしんどかったです。でもミーティング後にケース局員で夜遅くにうどん食べたり、全体でわいわいお好み焼き食べに行ったりするのは楽しかったし、GEILer(GEILのメンバーのこと)はみんな尊敬できるし話してて面白いし、なんだかんだ一年半楽しんでました(笑)。

—大変な事がありながらも1年半GEILの活動を続け、何を得られましたか?
一年半で扱った社会問題(2016には教育問題、2017には労働問題)についての初歩的な知見と、政策立案のエッセンスを垣間見れたのは、GEILで活動できたからこそだと思っています。ですが私の中での一番の収穫は、議論できる友人です。意見が対立して両者一歩も譲らず、朝まで議論をしたこともいい思い出です。お互いの価値観や、それを醸成した今までの経験も、何となくわかるようになりました、たぶん(笑)。

「GEILの価値は人にある」と、これはGEILの大先輩がおっしゃっていた言葉で、私もこの団体を通じて議論できた人たちとの関係には、学生や社会人含めて大きな価値を感じています。ありきたりな言葉ですが。だって自分が本当に考えていることをぶつけ合える関係なんて、大学でもめったにないでしょ?

あと、将来自分がやりたいことについても考えることができました。私の人生の目標は、老後に田舎でパンやお菓子を焼くことと、人生を終える直前に「人の役に立てたな」って思うことなんです。前者はGEIL関係ないんですが、後者はGEILに入って思うようになりました。政策は「人の役に立つこと」の一番の象徴であるといいますか、そうあるべきものなんだと思います。それをGEILで考えるのが楽しかったし、それを生涯かけて考えるという営みが、格好いいと思いました。

私自身は法曹志望で、それは変わっていません。でも、正しいパズルのピースになるだけで終わりたくないなと思いました。

—具体的にはご自身の将来についてどのような事を考えられましたか?
司法がどう国民の役に立っているのかを見たいと思うようになりました。GEILでは行政視点で国民を見ますが、政策の網ではどうしても全ての人を救うことはできなくて、そこから溢れてしまう人がいる。そんな人たちを、司法はすくい上げられると思うんです。将来的には、例えばADR(裁判外紛争解決手続)などと言った、より国民に近い司法のあり方について研究しつつ、それをよりいいものにできる仕事ができたらいいなと思っています。もっとも、もっと「かっこいい」ことを見つけたら、変わっちゃうかもしれないんですけどね(笑)。

—新入生へメッセージをお願いします
「本気出すのはかっこ悪い」「そんなに努力しなくてもさらっとできちゃうのがかっこいい」みたいな風潮、あるかもしれません。でもGEILは、全員が本気を出して、コンテストを運営しています。もちろん学生団体ですから、ゆるっと参加することもできますけどね(笑)。本気を出したり、熱くなったりすることが、恥ずかしくない場所です。ちょっとでもGEILがやってることがかっこいいかも…?と思った人は、とりあえず一度GEILerに話を聞いてみてください。GEILerはみんな、かっこいいので。

 

 

 

 

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脚注
[1]GEILの任期は一年半。引退後は各々資格試験の勉強や留学、他のサークルの活動などに注力できる。
[2]GEILは5つの局(ケース局、運営局、学生対応局、渉外局、広報局)で構成されている。ケース局は政策や社会問題について勉強を重ね、GEILのイベントのコンテンツ構築を担う団体のブレーン。
[3]CCはCase Checkerの略称。コンテストで各チームに1名つくファシリテーターのこと。議論のファシリテーションに止まらず知識面のサポートなども行う。
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