2018年12月に大きな議論を引き起こしながらも成立した改正入国管理法によりいよいよ外国人労働者受け入れが今年から本格化することになる。外国人労働者の受け入れによる経済への影響が喧伝される一方、外国人技能実習生の人権問題を始めとして外国人に関する負の側面もクローズアップされた。本稿では外国人政策を取り巻く問題を概説し、GEILが年間ケーステーマ(注1)として取り扱う問題意識を説明する。

そもそも、外国人労働者の流入は昨日今日始まった話ではない。バブル経済による人手不足を受けた1989年の入管法改正では日系人とその家族に「定住者」という就労可能な在留資格を与え、労働力不足の解消が期待された(近藤2009)。さらに93年には国際貢献を名目に受け入れる「研修生」に就労を認める「技能実習制度」が創設されたが、これは当初より経済界の労働力に対する要請から発したものであり(藤井2007)、報道のように実習生の低賃金、長時間労働、労働災害、パワハラ・セクハラなど人権侵害の温床となっている。

政府は長い間「単純労働者」「移民」の流入は認めないとする立場をとっていた一方、上述の制度を通じて外国人労働者は雇用の調整弁として日本経済を支えてきた。

※内閣府による、厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」に基づく集計(各年10月末現在の統計)
近年は景気回復による労働力不足も受け、毎年10万人以上の外国人労働者が流入しており、その多くが「単純労働者」である日系人(身分に基づく在留資格)、技能実習生、留学生のバイト(資格外活動)であるなど、「移民政策はとらない」という立場ながらも日本はすでに多くの外国人労働者を受け入れている。

さて、外国人政策は入管政策と社会統合政策の両面として捉えられるが、社会統合政策(行政は「多文化共生政策」と呼ぶ場合が多い)はどうだろうか。その実、外国人の多く住む自治体では取り組みが進む一方、国としての取り組みは計画の策定が始まった段階であるのが現状である。90年代以降日系人を中心とする外国人(「ニューカマー」と呼ばれる)の定住が進み、2000年代に入ってから「多文化共生政策」として自治体において多言語による行政サービスの提供や、福祉・教育・労働・住宅などの支援が進められた(渡戸2010)。2001年には日系人を中心とした外国人住民を多く抱える自治体が集まり外国人集住都市会議が設立され、外国人住民に関する施策の情報共有や国などへの政策提言などが行われている。

こうした流れを受け総務省は2006年「多文化共生推進プラン」を策定し、地方自治体に対して多文化共生についての計画策定・推進を求め、その後は自治体における施策の研究などを行っている。長らくこれら政策の主体は地方自治体であったが2018年12月に法務省が「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を取りまとめ、国として社会統合政策がようやく動き始めた。自治体からは期待の声もある一方、予算不足やスケジュールの短さからくる実効性への不安も見られる。

弊団体は多様な利害・立場・問題が存在する外国人政策、特に入管法改正を受け対策が求められる社会統合政策(多文化共生政策)に着目する。立場に囚われることなく柔軟に思考することができる学生の利点を活かしながら、グローバル化社会の中で世界的に問題となっており、将来日本においても問題となりうる外国人をめぐる問題を政策立案コンテストを通じて考えることで社会の変革を担う人材を輩出することを目指す。

注1 : 弊団体が開催するコンテストで政策を立案する際に、年間を通して扱う社会課題のこと。

引用・参考文献
近藤敦(2009),第2章 移民と移民政策 (2)なぜ移民政策なのか? 川村千鶴子、近藤敦、中本博皓(編) 移民政策へのアプローチ――ライフサイクルと多文化共生
藤井禎介(2007) ,日本の外国人労働者受け入れ政策 : 比較分析のための一試論 政策科学 14(2), 45-53, 2007-02立命館大学
渡戸一郎(2010),第11章 外国人政策から移民政策へ――新たな社会ビジョンとしての「多民族化社会・日本」 渡戸一郎、井沢泰樹(編著) 多民族化社会・日本――<多文化共生>の社会的リアリティを問い直す

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